全日本クイズリーグ「AQL」の全国大会が2022年3月21日、東京都千代田区の日経ホールで開催されました。13歳から80歳までが一堂に集結し、ジュニアの部(全国124団体参加)は東大寺学園、一般の部(全国129団体参加)はクイズサークル「椿」が優勝しました。2021年8月から全国各地で行われてきた地域リーグから、およそ8カ月間。「全国のクイズファンが、自らの手で、みんなで作る」というコンセプトの通り、全国の舞台でも、それぞれのサークルが問題を持ち寄り、熱い戦いが開催されました。
AQLで顕著な成績を残したチームのリーダーや、大会開催に関わった方など、5人にインタビューし、大会への思いや、普段のクイズ活動、クイズ全般の話などについて、語ってもらいました。連載形式でご紹介いたします。
(AQL運営注:執筆は、スポーツ記者を本業とされているクイズプレイヤー・三木智隆さん。完全ボランティアで執筆していただきました!三木さん、そしてインタビューに応じて下さった皆様、本当にありがとうございます。)
絶対的エースだけじゃない、超高校級集団の東大寺学園
東大寺学園は、昨夏にオンラインで行われた「第2回夏の選抜大会AQL」に加え、全国35校がAQLを想定した40問強のクイズを提出して完成度の高さを競った「第1回クイズ作問甲子園」でも優勝した。2021年度の高校クイズ界で、トップランナーを走り続けた奈良の名門校だ。
今大会では、最激戦区の関西リーグを全勝で突破して全国切符をつかむと、全国大会の予選リーグは開成学園(東京)に敗れて7勝1敗ながら、得失点差でAリーグ1位通過を決めた。エース松崎颯樹(2年)は2021年の「パネルクイズ アタック25 高校生大会」でパネル21枚を獲得して圧勝。AQLの前日に行われたクイズ界最大規模の大会「abc20th」では、大学生を交えた633人の参加者の中で予選2位を射止める驚異的な成績をたたき出した。クイズプレーヤーを対象としたドラフト会議があるとすれば、複数球団の競合が確実視される逸材だ。
AQLは突出した個の力だけでは勝てないが、松崎の回りを固めるメンバーも重厚だった。最年少の中学1年でレギュラー入りした南浦一貴をはじめ、全5枠でお互いを補うように正解をたたきだした。決勝で対戦した関西のライバル灘(兵庫)には勝負どころで3連答を決められ、一時は108-120と逆転したが、東大寺は相手のペースに惑わされない。ウィニングアンサー「青森山田(高校サッカーの強豪校)」は「1995年から監督を務める黒田剛の/」という前振りで正解。クイズ知識だけでなく、スポーツそのものに深い見識を持っていないと解答できないパフォーマンスだった。
高校クイズ界をけん引したリーダーの松崎颯樹が喜びの声を語った。
―決勝を振り返り、率直な気持ちは。
灘がたくさん正解し、100点を超えてきたときは、はらはらして、「負けるかもな」とも思ったんですが、こちらのペースを向こうに合わせることなく戦うことができて、勝てました。
―全国大会を振り返っていかがですか。
予選からいい形で勝てていて、本戦で開成に負けたときはやばいかなと思いましたが、決勝で勝てて良かったです。
―東大寺学園クイズ研究会の普段の活動を教えてください。
平日に週5日、2時間ほどやっています。フリーバッティングが中心で、abcのナンバー10(コース別クイズ)のルールなどで活動しています。
―企画者を立てた持ち回り企画もしていますか。
大学のように、企画を持ち回りでやることはあまりなく、既存の問題集を使って、問題を出し合うことが多いです。
―AQLが他の大会と異なる点は。
1人では勝てないという点です。1人が強くても、他の人が得点を伸ばさないと勝てないです。1人が積んだポイントは土台にしか過ぎません。
ノルマはありませんが、僕は6ポイントくらいを積むことをイメージしています。
―部員は何人くらい所属していますか。
中1から高2まで、30人くらいです。(活動に参加していない)幽霊部員もいるのですが。
―松崎さんは、中高クイズ界の盛り上がりをどう感じていますか。
オープン大会の参加者数が増えてきたり、クイズ研究がなかった学校にもクイ研ができたりしたケースがあって、驚くことはありました。
―これから1年は受験モードですか。
そうですね。やりきったという感じです。将来は法学部に進む予定です。(大学に入ってから)abcで今より活躍するにはペーパー1位か優勝しかないので、目指したいですね。
―クイズを始めたきっかけを教えてください。
中1のときに、クイ研の見学に行って、面白かったので入りました。
―クイズの勉強時間や勉強方法は。
(スマホで)ankiというアプリを回したり、問題集を読んだりしています。
―松崎君にとってクイズとは何ですか。
(しばらく考えて)ほぼ、スポーツ。ですね。
―クイズをやっていることに、ご両親の反応はいかがですか。
否定するようなことはなく、肯定してくれています。
(記事・三木智隆)