今大会は、日本全国津々浦々から出場サークルが東京に集った。ジュニアチームには、遠征費用の補助なども行われている。北海道からは、一般の部で、札Qと北海道大学、ジュニアの部で札幌南高が参加。九州からはそれぞれのリーグでRicotta、修猷館高(福岡)が出場した。
なかでも異色の存在と言えるのが20代から80代までの年齢層で組んだ中四国リーグ代表の「ももたろうくらぶ(通称・ももくら)」だ。2003年に岡山を拠点に創設されたサークルは、今年で結成20年目。これまで通算225回の例会を開催しており、そのなかで、1回しか欠席していないメンバーが冨山弘子さん(80)だ。今回のAQLは周囲のメンバーの薦めで出場を決め、全国の舞台でも鋭い早押しで「ツルゲーネフ」の正解も出した。
昭和5年生まれで90代となった村田栄子さんは昨年、自身のYouTubeチャンネルを作って動画を発表し、クイズを生涯にわたって楽しんでいる。80歳を迎え、一愛好家としてクイズに親しんできた冨山さんに、AQLの感想や、年齢を問わずに楽しめるクイズの魅力をうかがった。
―今回、「ももくら」は20代から80代のメンバーで構成されているんですね。
そうなんですよ。70代のときに出たかったですね。身の程知らずですね(笑)
―クイズの魅力は何ですか。
日頃、新聞を見ていて、テレビ番組を見ているでしょ。アタックとか。そういうときに、自分の分かる問題を早く押せたらうれしいわね。
―東京まで遠征して、大会に出てくるのはどういう気持ちですか。
私は年上だから、出るべきじゃないと思っていたのよ。(出場は)辞退して、応援には行くから、と言ったんですが、「選手で出て」と言われちゃって。
私、今、要介護2なんですよ。脊柱管狭窄症になっちゃって。今回、東京までは飛行機で来ましたよ。岡山空港では車いすを借りて搭乗口まで行って。着いてからも車いすで待ってくれていて、バス乗り場までいきました。楽ちんだったよ~。
―それはすごいですね。大会のクイズは楽しいですか。
そうなんです。楽しいのよ。ただね、指がついていかないんです。私も20年若くて60歳だったら、遅れは取らないと思うのよ。
―オンラインのクイズはしますか。
できるわけないでしょ。80歳なんですから。ロックアウト(クイズLIVEチャンネルで放送されている「LOCK OUT!」)とかを見るだけだわね。
―昔、テレビのクイズ番組で活躍されたと聞いています。
一番最初に出たのは…、あなた、増田貴光ってご存じ? (その増田さんが初代司会を務めた)「ベルトクイズQ&Q」に出たのよ。娘が赤ん坊だったときくらいから、50年くらい前かしらね。クイズも何も知らないときに、応募したら、それで予選に受かって。それから、いろいろと出ました。
―サークルでやっているときに感じる楽しさは。
楽しいですよ。私は、年を取っても、中身は子どもだから、いろんなことをおしゃべりして言うわけ。分かった問題を私が押し負けると「何なのよ~」と言って。好き勝手やっていますけど、それは周りが優しいから。「冨山さんなら仕方ないねー」って言ってくれるんです。
―脳の活性化にはなりますか。
私、70歳過ぎたときに、息子に「クイズ辞める」といったんです。だって、(ボタンを)押せないんだもん。そしたら息子は「ぼけるぞ!」と言って。でもね、70歳過ぎたら難しいのよ。80歳過ぎたら全然だめです。昔は芥川賞、直木賞(の受賞者)もすっと、いっぺんで覚えていたんだけどね。
―東京までサークル対抗戦で出てきたこと。
よく分かりませんが、遠征なんてほとんどしませんね。一度、広島の森先生(精神科医のクイズプレーヤー森隆徳さん)のクイズの会に連れて行ってもらったことはあります。箸にも棒にもかからなかったけど。そのときはお年寄りの女性4人でクイズやって。村田栄子さん、水津(康夫)さんの奥さん、森さんの奥さんと私。お昼休みの余興だったわね。
(ももたろうくらぶの設立者・石貫能和さんの補足)
冨山さんはアタックの予選が行われたKSB(瀬戸内海放送)で、私が連絡先を聞いて、後日、電話でお誘いしました。冨山さんは例会中、ICレコーダー3つで録音しているんです。寝るときに聞いて、早押しクイズを耳で覚えるようなことをしています。本人は睡眠学習と言っていますけど。ロシア文学はむちゃくちゃ詳しいんです。文学は強く、大河ドラマも詳しいんです。毎回毎回、新聞の切り抜きをして、予習をされてきています。それでいつも「なぜ、これを出さなかったんだ」と言ってくれます。
(記事・三木智隆)