TBS系「東大王」などのクイズ番組や、QuizKnockのメンバーの一員として、幅広く活躍する鶴崎修功は、今大会のジュニアの部で、伊沢と交代で司会を務め、準決勝では問題読みもこなした。鶴崎自身は鳥取県出身。高校時代はクイズに興味を持っていたものの、地方在住者としてクイズの情報を得るのは難しく、クイズ大会やクイズ番組に出る機会には恵まれなかった。地方と都市の〝格差〟や、動画配信の重要性などを、鶴崎の視点から語った。
―今回の鶴崎さんの立場は。
僕は一般参加者です。「本郷チャージャーズ」(東京大学クイズ研究会OBが中心)というチームの一員として、一般の部に出ました。残念ながら、ベスト4に残れなかったけど、強いチームが本当にたくさんありましたね~。
―午後はジュニアの部のMCと問読みをされました。今の高校生を見ていて感じることはありますか。
昨日(3月20日)のabcもそうでしたけども、大学生以下のレギュレーションの大会だと、大学生ばかりが活躍することが多いです。でも高校生の中でも、実力者はたくさんいて、その人たちがチームを引っ張っていくのを見られるのが面白いです。ジュニアの部には、部活として最近誕生した学校も多いです。今回、見たところでは、九州の修猷館は、僕が(クイズを)始めたばかりのときは、あまり聞かない高校だけど、強かったですよね。
―AQLと他の大会との違いは。
団体戦というのが非常に大きいです。団体戦で、みんなが目指す大会ってあんまりないですよね。それがとてもいいところ。また、問題を各サークルが用意しているので、みんなが問題を作ることで、どのサークルの問題がどのように出題されるかを考えるのも面白さの一つかなと思います。地方のサークルだと、ご当地の問題が出るのではないか、と思って対策するのがいいですよね。
―鶴崎さんが出演している「東大王」でも高校生を対象とした「クイズ甲子園」が放送されています。テレビのクイズと、今回のようなクイズの違いは何ですか。
一番違うのは、例会や舞台上のクイズ大会は「文章で出題される」ことです。テレビクイズは映像が中心ですよね。テレビは映像を映すものですから。一般の大会では、文章読み上げクイズが多い。文章の構造を理解して先を読み、どこでボタンを押すか、という技術が発達してきた競技ですよね。そういうのが面白みだと思います。
なので、求められる能力は、割と違うかなと思います。テレビ番組は一般の人が分からない問題は出にくい傾向にあります。
テレビだと、歴史はまだしも、理系の問題はかなり少なくなります。一方、一般の大会はそういう制限がないです。出題者が面白いと思えば、出題対象となります。芸能でも、(出題対象の)曲などの縛りがないですし、アニメゲームもたくさん出せるのは面白さですよね。
―鶴崎さんは鳥取県出身。クイズの活動をする上で、地方と都市部の差を感じていますか。
部活という形の中で、部員は実力を向上したいと思いますが、強いところと交流していかないと、強くなれないというジレンマがあり、そこは地方にとってはつらいところですよね。ただ、可能な限り、こういった全国大会や、地方の一番大きい都市の大会とかに顔を出して、やってもらえるといいかなと思います。
大人側の努力としては、大会の支援をしたり、地方で大会を開いたりすることも大事になると思います。
―クイズ研究会の立ち位置(設置理由)が、テレビクイズの対策から、AQLなどの大会で活躍するためのものへと変遷を感じる。この流れはどう考えていますか。
いいことかなと思っています。楽しむ人が広がれば、いいですよね。
僕は、クイズ番組が好きだったけど、鳥取にはクイズ研究会はなかった。今も鳥取にはクイズ研究会は、あんまりないんですが(笑)。
今まではクイズ大会って同人文化なので、手弁当で大会をやって楽しむという世界でした。今、スポンサーがついて、大会が大きくなって、今日も豪華な場所、豪華なセットで大会をやっています。そうなると、クイズも進化していくのかなと思います。人数が増えれば増えるほど、クイズもいろんな形が増えてきて嬉しいですよね。僕も頑張っていきますが、いろんな努力で進んでいくと思います。
―今大会やabcのように、企業が協賛につく大会も増えてきましたが、継続性があるかは分かりません。未来についての課題は。
部活という観点でいうと、どの学校にもあるような部活の一つとして定着すればいいと思っています。
文化部は、放送部や茶道部とかいろいろありますが、そのなかに入っていければ、安定した立ち位置になりますよね。クイズ研究会は、まだある方が珍しい状況なので、普通に(どこの学校にも)ある形になればいいなと思います。
企業支援については、ひたすら赤字になったら大変ですよね。愛があれば続くかもしれないけど、息切れすることはあるじゃないですか。
今後、どうなるか分かりませんが、eスポーツとかも、似たような境遇にあると思うんです。今、eスポーツはスポンサーもついて、大きくなってきています。ただ、成功しているeスポーツもあれば、広がっていないeスポーツもある。クイズもどうすれば正解か分かりませんが、うまく広げていく、正しい努力がされていければいいなと思います。
―文化系部活として、高文連の全国高校総合文化祭(総文)などもありますが、クイズも、eスポーツ的に独自路線を打ち出して、企業のスポンサーシップを取った方がいいのでしょうか。
両方、目指すのが一番いいと思います。企業の支援だけだと限界はあって、テレビの「高校生クイズ」を目指すとなっても、学校としては薦めづらいこともあると思います。高文連に加盟すれば、公式感も出ます。大人も支援していいという感じを出すのは大事かなと思います。
ただ、高文連に加盟するだけでも駄目で、企業のお金が入ってこないと、マイナースポーツの大変さや、お金がなくて人気がでないという大変さも出てきます。企業がスポンサーについてくることは大事ですよね。
さっきeスポーツの例を出しましたが、eスポーツは国体で実施されるようになったんですよね。そういう公式感は大事ですよね。クイズも国体で実施されれば、面白いですよね。企業頼りの大会だと、企業が離れると終わってしまいますしね。
―今大会もインターネットで生中継されています。動画配信のメリットはどう感じていますか。
YouTubeはみんなが見ていますよね。若者で見ていない人はいないというレベルになっています。YouTubeは誰でも配信できて、見ることができます。今まで、YouTubeで放送されるクイズ大会ってほとんどありませんでした。なので、どんな風に大会をやっているかも分かりません。自分は高校生のときに高校生クイズに出ようと思っているなかで、abcという大会があることを知ったのですが、どういう大会か全く分からなかったですし、行きませんでした。そういうのも、今だとYouTubeで見ることができます。YouTubeは人気が出たら収益化もできるし、観戦コミュニティの醸成もできますよね。
(記事・三木智隆)