『第2回クイズ作問甲子園』にご参加いただいた皆様、ありがとうございます。「42問の作問」というかなり参加ハードルの高い企画だったにもかかわらず、40校と多くの学校にご参加いただきました。心より感謝致します。
審査委員の総評、及び上位校のコメントを以下に掲載致します。
なお、提出された問題は「新・一心精進アーカイブ」にアップロードする予定です。
ご覧になりたい方は、
・【中高生以下のみ】AQLに加盟し、エントリースクリプトで「新・一心精進アーカイブアクセス希望」としてメールアドレスを記載する。(今年度期限:12月18日(日))
・AQLサポーターズクラブへの加入
・『新・一心精進』有料会員登録
いずれかをお願い致します。
近藤仁美
全体として完成度が高く、「人を楽しませよう」「なにか学びを提供したい」という気持ちがよく表れた回でした。また、単に自分の能力を示すだけでなく、問題を解く人や問読みをする人など他者への配慮も作問力のうちと捉えている方が多く見受けられ、初心者も参加するAQLという場において大変頼もしく感じました。
どのチームも力作ぞろいで、審査はかなり難しかったです。高得点のチームはもちろん、最終的に点を入れられなかったチームにも、必ずキラリと光る問題がありました。この大会を通して、皆さんの自信につながる1問がみつかっていましたら幸いです。
高橋太郎
先に公開された評価の指針、すなわち「①第三者に読まれることが意識されているか」「②問わんとする題材の面白さが伝わるか」を軸に、すべての問題を5点満点で評価し、その合計点で順位付けを行いました。同点の場合は、個々の問題に付けた点の分散が小さいほうを上位としました。全体として同じくらい面白い問題群ならば、瑕疵の含まれた問題は少ないほうがよいという判断からです。
①は主に減点方式の指針です。誤字脱字、事実誤認、修飾被修飾の破綻が無いかなどの観点で採点をしました。多くのチームが綺麗な文を作成された問題を揃えており、メンバー間で適切なチェックが行われたのだろうと推察します。とくに、裏取りのソースや別解、読みがな等が充実しているチームはこの傾向が強く、方針を定めてチームとして実現する能力の高さを感じました。
②は主に加点方式の指針です。指針①を満たしていることを前提として、平易な答えに落ち着く問題であっても月並みな文章構造に頼りすぎない姿勢を評価しました。前フリに盛り込んだ情報が単発のトリビアに終始せず、後限定とのつながりを想起させる役割を持つような問題は、題材の面白さを伝える筋道が通っているものとしてとくに評価しました。
作問甲子園への挑戦、本当にありがとうございました。チャレンジをすれば何らかの評価軸に沿って優劣が生まれ、ときに憤ることもあるかと思います。ただ、この作問甲子園の評価軸は各審査委員が自由に(当然、各々が「AQLに相応しい問題群とは何か」を意識し定めた軸ではありますが)決めたものであり、クイズの問題作成における正解や規範たりえるものでは全くありません。(もちろん上位に入賞したことを喜ばしく思っていただけたら、我々も問題を精査した甲斐を感じます。)
私は作問甲子園を開催する意義として、問題作成技術の向上のほかに、チームメンバーや問題を受け取る人など、他者のことを考える意識の涵養が挙げられると考えます。そういった意味では、問題の提出が済んだ時点で作問甲子園の目的は達成されているのかもしれません。付いた順位はどうあれ、チームで楽しく、厳しく、十分に議論された末に用意された42問となったことを願っています。
鶴崎修功
決勝になるとすごく面白い40問を揃えた団体が多く、差をつけるのが大変だなと感じました。このままの調子で進化するなら、5年後くらいには作問甲子園なんて用済みですね。
すべての問題を10点満点で採点していった結果、9点の問題が2つ、しかも同じチームについたので、ここを1位に選ばせていただきました。Aコースは予選で採点したため改めて採点はしていないのですが、9点の問題2問を作ってくれたここが総合点数的にも1位ではないかと思います。
決勝に来られたみなさんの問題はかなり面白いです。もちろん、まだ粗があるかな?という団体もありますが、試合をするには十分なセットだと思います。我々大人側のほうがもっとがんばらないといけないかもしれません。
最後に改めてになりますが、点数がどうあれ、なんか訳分かんねえ大人が偉そうに点数つけてきたぜ、でも我々はこういう問題が面白いんだ!という感じに受け取っていただければと思います。人の意見なんかそんなに気にせずにやってください。
徳久倫康
発見と工夫に富んだ問題群が並び、今回も楽しく拝見しました。多くの提出作が、たいていの社会人サークルのものより完成されていると思います。基本的にクイズは好きなものを好きに出せばよく、だとすると採点は不可能なのですが、相互出題の団体戦という制約をよすがに、あえて優劣をつけました。全体を通して気になることがあったとすると、「クイズ的な都合」で表現を歪めてしまっている(本来切り離せないひとつながりの表現を無理に切り取ってしまっている、など)例が、チームをまたいでいくつか見られました。これらはむしろクイズとしては押しやすい、答えやすい問題にするための配慮という場合も多いのですが、正確性とホスピタリティにうまく折り合いをつけられると、受け手の違和感を解消でき、完成度が上がっていくように思います。チームによっては細かいことをいろいろと書いてしまったのですが、繰り返すように、本来、クイズは好きなものを好きに出せばよいのです。ただ、「いつ」「どこで」「誰に」出すかによって必然的にチューニングが求められるのがおもしろいところでもあります。今回AQL向けに問題を揃えた経験は、ほかのシチュエーションでもかならず役に立つでしょう。みなさんの今後のクイズ生活が、より豊かで充実したものになりますように!
中林もも
前回に引き続いての審査員を担当させていただきましたが、二度目の試みにおいてぐっとレベルが上っていたことに驚きました。
どの問題を「良い」とするのかの基準は人によって様々ですが、二次まで進んだ問題群はどれも優れており、少しの瑕疵が判定に大きく影響する形になったと思います。
能勢一幸
一次審査を通過しただけあって、格段にレベルが上がりました。今回も前回に引き続き、初心者にも配慮した二択問題を採用しているチームには加点をした上で審査を行いました。なお、審査をするにあたり、「昨年」「今年」などの後に(◯◯◯◯年)と西暦年などを補足で加える、作品名は『』で囲む、文字の縦位置やフォントは統一するといったマナーに忠実に従っていると、問題の質が同程度で迷った場合は優先されることが多かったように思います。オリジナルの切り口の問題を揃えたいという気持ちもわかるものの、聞き覚えのある問題や時事問題もバランスよく含まれている方が全体の完成度は高く感じられ、問題群として評価することの難しさを改めて感じました。
東問
公平を期すべく全問題をランダムに混ぜて採点したため個々へのコメントはできませんが、昨年に比べ全体としてレベルが上がっていると思います。おもろい問題がたくさんあって楽しかったです。ありがとうございました(⋈◍>◡<◍)。✧♡
三木智隆
昨年度よりレベルの高いクイズが増えたと思います。別解・判定基準まで詳しく書いていただいた学校が多く、とても出題しやすいです。
山上大喜
AQL作問甲子園に参加された皆さん、お疲れさまでした。参加校にはそれぞれフィードバックしましたが、来年参加する人などにも伝わるよう、全体として特に多かった問題点を書きます。高校によってできていること・できなかったことが違うので、自分たちができたと思ったことは気にしなくて大丈夫です(特に上位の高校はほとんどできていました)。
・日本語の文法が守れているかチェックしよう
単純に「てにをは」がおかしかったり、主語と述語の関係性がよく分からなかったりする文章がありました。他の問題文ではできているのに、と思うことが多かったので、他人の目による最終チェックを入れるのが良いと思います。
・耳で聞いたときに分かりやすいか気にしよう
今回は耳で聞く問題文なので、同音異義語がある熟語や、音だけではすぐに頭の中で漢字変換できない熟語を使うと不親切になることがあります。代替の表現がないときは仕方ないですが、言い換えられると感じた問題もかなり多かったので、できるだけ耳で聞いて伝わる表現にすることを心がけましょう。迷ったら類語辞典などを参照するのがオススメです。
・表現を工夫してコンパクトにまとめよう
文は短ければいいというわけではありませんが、情報量が増えないのに単語や文字が多すぎると感じた表現が多々ありました。一度立ち止まって、もっとコンパクトに説明できないか工夫してみましょう。ある程度慣れないと難しいと思いますが、多くの出典を見比べる・類語辞典を活用するなどして、ぜひチャレンジしてみてください。
・知らない人がその文を読んだらどう思うか意識しよう
知らない人が聞いたときに誤解を生みそうな説明や、前提(説明なしに伝わると判断している知識)が高すぎる問題などが多々ありました。その題材についてよく知らない人が読んでもできるだけ意味が分かる・面白さが分かるような文を意識できると更に良くなると思います。全ての問題でこれができるわけではないので、無理そうなら他の問題でバランスをとるのも大切です。
・裏取りにWikipediaのみを使うのは避けよう
今回はAQL側が出しているお手本の出典欄にWikipediaがあったので減点はしませんでしたが、誰でも編集できる(=詳しくない人が適当なことを書く可能性もある)Wikipediaのようなサイトは、現状の社会では出典に向かないとされています。最近は良質な記事であれば出典として使って良いという考え方もあります(私も賛同できる意見です)が、そう見極められる場合以外には信頼しすぎない方が良いと思います。
・解説欄を活用しよう
先に述べた前提が難しすぎる問題や、クイズ的な工夫により正確性が少し失われた問題、そもそも解説ありきで面白がるタイプの問題などは、解説欄をうまく使って情報を補うことで良くなる場合もあります。今回はどう出題されるかまで共有されていなかったようですが、しっかりできている学校もありました。解説ありを意識すると出題の自由度が広がるので、次回からはチャレンジしてみてください(やりすぎると時間がなくなるので注意)。
・問題統括を置いて全体のクオリティを揃えよう
各問題の完成度のバラつきが大きい学校もありました。すごく面白い問題が出ている中で、そもそも限定がとれていない問題や日本語が明らかにおかしい文章などが見られました。初心者を含めた様々な人が作問に参加するのは非常に良いことですが、最後に慣れた人がチェック・修正してあげてください。
また、上位校入りを目指す学校は、問題統括が最初に全体のコンセプトを何となく共有して多めに問題を集め、最後に文章の書き口を揃える・良い問題を選定するというステップを踏むとより良いと思います(これはかなりレベルの高い話なので、気にしなくても大丈夫です)。
色々書きましたが、全体としてとてもレベルが高く、実際にクイズをさせてもらった(参加者に近い立場で採点できるよう、早押しの場を設けていただいた)ときも、楽しいと感じる問題群が多かったです。特に上位校の問題群は、コンセプトがしっかり考えられた上で実装されており、最終的には(AQLの採点基準をどう捉えるかについての)私の好みで点差をつけています。こうなると好き勝手言う映画のレビューみたいになるので、上位校の差はわざわざつけず、上位校は全体表彰・作問に慣れてない学校にはフィードバック、のような形が良いと思いました。
クイズという遊び場は、その自由さと広大さゆえに、多くの道具や技術を持つことでより楽しく開拓できると信じています。皆さん、素晴らしいクイズをありがとうございました!
松原東也(一次審査のみ)
どの学校の問題も問題文構成や裏取りなどがほぼ完璧で、非の打ちどころがない問題群であったためいい意味で審査に困りました。ほぼすべての学校に高得点をつけたかったです。
川嶋大斗(一次審査のみ)
問題作成や提出作業などを行った参加者の皆様、本当にお疲れ様でした。力のこもった問題をたくさん拝見することができ、審査員以前に一人のクイズファンとして、とても楽しい体験をさせていただきました。ありがとうございました。
チームによって様々な結果が出て、受け止め方もそれぞれかとは思いますが、個人的にはこのイベントが勝ち負けを決めるだけの存在に終わってほしくないと思っています。今回のイベントを通して、問題作成についての様々な考えに触れることができたと思うのですが、それによって今後の問題作成がより楽しいものになることを願っています。
私は今回、各問題をA~Eの5段階で評価したのですが、私が3位としたチームは42問中36問でC評価を受けていました。他はB評価とD評価がそれぞれ3問ずつありました。つまり今回のAコースでは、平均的なクオリティの問題を揃えれば上位を狙えるということになります(言うまでもありませんが、これは決して容易なことではありません)。というわけで、今回見られた惜しい問題の特徴を順に挙げていきたいと思います。
・文章の中で、シニフィアンを聞いているのかシニフィエを聞いているのかが統一されていない
シニフィアンはある事柄を指し示す言葉(厳密には音声的な要素)、シニフィエはある事柄そのもののことですね。「〇〇語で××という意味がある~」という形のフリは競技クイズによく出るものですが、このフリはシニフィアンを説明しています。一部の問題では、そのようなフリの後でシニフィエを聞いている問題があり、その部分の齟齬は低い評価の要因となりました。
・限定できていない
問題文を受け、多くの人がある特定の事柄を連想できれば、それで良しとするという考えもあるのかもしれませんが、個人的には競技クイズである以上、厳密な限定がなされるべきだと考えます。「厳密さ」の具体的な線引きについてですが、反例が存在する可能性が極めて低いといえる場合は、厳密な限定がなされていると考えています。今回は明らかに反例が存在していたり、反例が存在する可能性が極めて低いわけではなかったりする問題が散見されました。具体的な改善案としては、その事柄特有の情報や固有名詞を盛り込むことが挙げられます。
・出典にWikipediaを使っている
これについては問題そのものの評価とは関係ありませんし、AQL公式の見解として出典にWikipediaを使うことが禁じられているわけではないのですが、重要なテーマであると感じたため触れておきます。Wikipediaとコトバンクはともにオンライン百科事典ですが、前者は後者と違い、網羅的で厳密な事実査定が行われていません。事実とは異なる記述があったとしても放置されているケースもあります。このような理由から、出典にWikipediaを使うことは推奨できないと考えています。コトバンクの記述も鵜呑みにしていいわけではありませんが比較的信頼しやすいといえます。
次回以降このイベントに参加される予定の方は、上記のことについて考えて損はないかと思います。最後になりますが、個人的に最も良いと思った1問を勝手ながら表彰します。
(ドラムロール)
「チーム02」御中の32問目です!おめでとうございます!
神野莉子(一次審査のみ)
初年度だった昨年に比べ、全体的なレベルが向上したように感じました。最も高得点をつけたチームは、抜きんでた完成度と評価しています。
クイズの問題を作る行為は、問題を聞く側の立場やシチュエーションを考えなければなりません。このことは、クイズに限らず、社会生活でも有用です。サークル、部活の仲間とともに、問題作りという課程を通じて、大きな学びを得てほしいと考えています。
今回は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
福岡侑季(一次審査のみ)
まずは夏のセンバツAQLに問題を投稿して下さりありがとうございます。他の方ならまだしも、こんなよく分からん奴が偉そうに審査する所に問題を送るのはさぞ勇気の要る行為だったと思います。初心者ならなおさらです。なのでまずは問題を投稿してくれたことに本当に感謝しています。さて、総括コメントということですが、長い文だと読むだけでクッタクタになると思うので一言で言うと、「全体のクオリティの高さ」に驚きました。クイ研が投稿したと思われる問題文は勿論、あまり慣れていない、作問経験が少ないと書いていた高校も努力の跡が見える素晴らしい問題文を提出していました。次回までに更に作問力を磨いてもらい、是非来年も挑戦して頂ければと思います。本当にありがとうございました。
林志邦(一次審査のみ)
今回の審査を通じて、私は高校生が作る問題の全体的なレベルの高さに感心しました。また、多くの問題群に遍在した「高校生ならではの視点で作られた問題」について興味深く感じました。最近、「昔(主に私が高校でクイズをしていた頃)は高校生と大学生がやるクイズの間にはギャップがあったのに、今ではほとんど似たような傾向・体裁のクイズをしている」というような論をよく耳にしますが、そうはいってもやはり提出問題を見ると、その中に潜む良い意味での「高校生らしさ」を感じずにはいられませんでした。私が思うに、高校生にとって、無理やり背伸びしてまで所謂「大学生らしいクイズ」に合わせる必要はありません。こういった意味でも、高校生らしい問題に真剣に向き合う今回の審査は大学生である私にとって刺激的な出会いであり、その結果に私は安堵し、今後運営していく高校生向けの大会の参考にもなりました。参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。また、このような機会をくださった運営の方々にも感謝を申し上げます。
中山拓海(一次審査のみ)
どの問題群も力がこもっており、審査していてとても楽しかったです。ありがとうございました。
別所輝典(一次審査のみ)
Cグループの皆さん、まずは作問お疲れさまでした!どのチームも非常に良くできた問題が多く、ハイレベルな戦いだったと思います。審査基準で述べさせていただいた通り、「読まれる」ことを意識した問題を高く評価いたしました。日本語の正しさ・美しさはさることながら、解答者に正しく伝わる問題構成であるかも審査させていただきました。クイズ初心者にも親しみやすいよう身の回りの物事から出題したり、作問者の発見を作問したりと様々な出題コンセプトがありましたが、私からはそのコンセプトが問題文に表れているかを見せていただきました。問題の面白さが伝わる問題構造化どうかが明暗を分けたのではないでしょうか。
採点方法上、断腸の思いで低い点数をつけた学校も少なくありませんでしたが、その学校の問題を頭ごなしに否定するものではないということをどうかご理解ください。ただし、常に問題をより良いものにしようとする向上心を忘れないでください。今回高得点をつけた学校にもまだまだ改善の余地はあるかと思います。各校への非公開コメントにおいて未熟ながらアドバイスをさせていただいたので、今後の作問に是非活かしてほしいと思います。
作問甲子園の審査員という貴重な経験をさせていただいたことを、この場をお借りして感謝申し上げます。